ぼらんたーるな人 vol.7 浦久保和哉さん(笹川スポーツ財団)

東京マラソンを支えるスポーツ・ボランティア

浦久保和哉さんは「笹川スポーツ財団」の「東京マラソンチーム」チーム長です。「東京マラソン」は以前から開催されていたと思う方もいるかもしれませんが、それまで東京都心部で行われていた「東京国際マラソン」と市民ランナーや障害者が参加する「東京シティロードレース」をまとめ、市民参加型の大規模なシティマラソンとして今年2月に生まれ変わりスタートしました。2007年に開催された「東京マラソン」は参加者3万人を誇る国内最大規模のマラソン大会となり、それを支えるスポーツ・ボランティアは1万人に上りました。このボランティアを支援、運営統括するのが「笹川スポーツ財団」であり、マネージメントを担当するのはチーム長の浦久保さんです。1万人ものボランティアをどうすればマネージメントできるのか、お話を伺いました。

■「スポーツ・フォー・エブリワン」をスローガンに「東京マラソン」の実現を目指す

大学院でスポーツ政策論を学び、修了後は(株)三菱総合研究所に入社、文部科学省や地方自治体などに向け、スポーツ振興のための調査や政策提言の仕事に従事していました。スポーツ振興のために考案したさまざまな提言を現場で実現したいと、2002年都心での大規模市民マラソンの開催実現に奔走する「笹川スポーツ財団」の職員になりました。
「ロンドンマラソン」を皮切りに「ニューヨーク・シティマラソン」などを石原東京都知事、日本財団・曽野綾子らとともに視察し、東京都心の公道での大規模なマラソンイベントの実現が難しかった当時、海外の国際都市でのマラソンイベントの魅力と運営体制を調査・報告。開催実現への大きな足掛かりとなったのです。
その後「東京マラソン」の開催に向け準備が進められ、2006年から私は東京マラソン事務局へ出向することとなり、ほかの大会でも運営に大きく貢献するボランティアのマネージメントを担当しています。「東京マラソン2007」では多くのボランティアとともに「東京マラソン」実現達成の感動を味わいました。

■ボランティア・リーダーはマラソン運営の要め

「笹川スポーツ財団」は、スポーツを誰もが楽しめる環境を作っていくためのさまざまな事業を展開する中で、市民を対象とする「神宮外苑ロードレース」や「東京シティロードレース」の開催を実現してきました。「東京マラソン」は東京という「大都市の公道が市民のものである」ということで、健常者のランナーはもちろん、障害者のランナー、運営をサポートするボランティア、さらに沿道で応援する市民が一体となって、感動を共有し、達成感を味わえる、都市をあげた一大スポーツイベントとして発展させようという試みでした。

3万人のランナーが走る大きなスポーツイベントとなった「東京マラソン」の運営には、ボランティアの参加がどうしても必要です。しかし、多くのランナーが参加し、都市機能の一部を止めるイベントの運営は、寄せ集めのボランティアだけでは調整が取れません。そこでボランティア・リーダーの養成が急務となりました。
養成にあたっては「NPO法人日本スポーツボランティア・アソシエーション(NSVA)」にご協力いただくこととなり、2005年から「スポーツボランティア・リーダー養成研修会」を実施しました。NSVAの宇佐美彰郎理事長は、メキシコ・ミュンヘン・モントリオールと、オリンピックのマラソンに3回連続出場し、その後東海大学で教鞭を執り陸上の指導をするなど豊かな経験を積まれ、NSVAを設立しました。NSVAにはほかのランニングイベントから、ボランティア派遣などの協力依頼の実績があり、その中で宇佐美さんは多大なご教授をくださり、研修会の講師も引き受けてくれました。

■“あなたがいたから”

マラソンの運営現場は予期できないハプニングの連続です。ボランティア・リーダーはさまざまな局面を解決する、クリエイティブな指導力が必要ですが、とにかく「東京マラソン」のボランティア・リーダーをきっかけにスポーツイベントの楽しさと、ボランティアを統率する醍醐味を体感してほしいと思っています。

■お問い合わせ先:笹川スポーツ財団 (http://www.ssf.or.jp/

■東京マラソン2008 ボランティア・リーダー養成研修会にお伺いしました

NPO法人日本スポーツボランティア・アソシエーション理事長、東海大学教授である宇佐美彰朗氏のもと、ボランティア・リーダー養成研修会が行われました。

「スポーツ・ボランティアの資質とはどのようなものなのでしょか、リーダーとして求められるものは?体験しながら確認してみてください」宇佐美先生

マラソン大会で、想定されるボランティアの活動を
この日の研修会参加者100人が、皇居桜田門近くで実習しました



実習のファシリテーターである笹川スポーツ財団 東京マラソンチーム 森村ゆきさんのテキパキとした言葉と指導は気持ちが良い。

参加者の皆さんは、そんな森村さんに信頼を寄せています。彼女も以前はこの研修会の受講者でした。

ボランティアのチームリーダーが決まりました。リーダーは出欠を取ります。

「この時、考えて欲しいことは短時間で正確に出欠を取る方法です」森村



グループの中から役割が決まりました。受付、荷物受付、スタート誘導。

「一度預けた荷物を出してほしいとか、やっぱりコートも預けたいなど、いろいろなことを言う人もいるということも想定してみてください」森村

ボランティア役以外の人は、ランナー役として皇居を走ります。



コース整理、給水

「ランナーは紙コップの水が自分の顔にかからないように、口をつぶして飲みます。ですから紙コップに入れるお水の量や渡し方には工夫する必要があります。1976年のモントリオールプレ大会から、給水ポイントが、10キロから5キロに変わりました。最近はランナーに手で渡しても良いということにもなりました」宇佐美

フィニッシュ(ランナーがゴール→メダルを渡す→ゼッケンの回収→荷物返却)

「ランナーがフィニッシュしたので、これで最後だとは思わないでください。ここで大切なことは、時間内で会場案内(誘導)ができるかということです。また、リーダーは、ボランティアからその役割が完結したことなどの報告を受けることを忘れないでください」森村

グループ別反省会

ランナーとしての立場、ボランティアをする上での工夫、対応の問題点にも多くの気づき、意見が出ました。

「リーダー役は限られた時間の中でボランティアに活躍してもらわなければならない、それには、リーダーの明確な指示が必要です」森村

スポーツ・ボランティアは、数値に表れないけれど、
人が本来持っている思いや能力を引き出す刺激を与えてくれるコミュニティー

「東京マラソン2008」では、ランナー3万人に対し、ボランティア約1万2000人が必要になるといいます。そのような中で、ボランティア・リーダーの役割とは、当日、東京マラソンに熱い思いで集まってくれたボランティアの人々の大切な時間やエネルギーを無駄なくマネージメントすることであり、このボランティアで、汗を流して良かったと思ってもらえることでその役割を果たすことができるのだということが分かりました。

■「東京マラソン2007」冷たい雨の中、1万2000人のボランティアが活躍

2007年2月18日「東京マラソン2007」第1回大会が、1万人を超えるボランティアが3万人のランナーを支え、降りしきる雨のなか開催されました。参加したボランティア、ランナーからいただいたメッセージの一部を紹介します。

「多くのランナーから“ありがとう”“ご苦労様”と声をかけていただき、その言葉に支えられて寒い中でも楽しいボランティア活動でした」

「給水所のボランティアの皆さんも飲み物などを渡す手は震えていて、すごく寒い思いをされているのだろうと思いましたが、たくさんの笑顔をいただきゴールまで走ることができました」

「ボランティアに参加したおかげで感動をいっぱいいただきました。沿道の方々からも感謝の言葉を掛けていただいたことは何より嬉しかったですし、ランナーの皆さんとともに完走した気持ちです」

冷たい雨の中、沿道での温かいボランティアの声援や笑顔が、
多くのランナーを勇気づけ完走へと導き、
また出場したいという熱い思いと素晴らしい一体感を残したのです。