ぼらんたーるな人 vol.5 小山内美江子さん(JHP・学校をつくる会 代表)

世界平和を望む確かな視点と実践力を持つリーダー

小山内美江子さんは、特定非営利活動法人「JHP・学校をつくる会」の代表です。1992年〜1993年、学生たちとともに実施したタイ国境キャンプから帰国するカンボジア帰還難民の救援活動中に、子どもたちのための学校建設の必要性を強く実感し、1993年「カンボジアのこどもに学校をつくる会」を設立します。設立に至る思いにはどんなことが、またリーダーとしてどのようなことがあったのでしょうか。お話をお伺いしました。

本名:笹平美江子(ささひらみえこ)
1930年1月8日生まれ / 神奈川県横浜市鶴見出身
脚本家。代表的な作品は「特別機動捜査隊」「ウルトラQ」「キイハンター」「マー姉ちゃん」「3年B組金八先生」「徳川家康」など
JHP・学校をつくる会代表、国際ボランティア・カレッジ塾長、日本子どもNPOセンター理事、熱海国際交流協会会長 など

■初めての海外支援、ヨルダン難民の救援から肌身で感じた惨状に立ち上がる

1962年NHK「残りの幸福」でシナリオライターとしてデビュー以降、脚本家・作家として多忙な日々を送っていましたが、15歳で終戦を迎えた戦中派として、繰り返される戦争とその被害者・子どもたちの惨状に胸を痛め、自ら何かできないだろうかと常に考えていました。
仕事に追われ、なかなかその機会が得られなかったのですが、1990年NHK大河「翔ぶが如く」のシナリオを書き終えた時に、イラクのクエート侵攻による湾岸危機が勃発し、ヨルダン難民救援に向かうボランティアの若者たちの記事に「これなら、私にもできるかもしれない」と心を決めます。湾岸危機に際し「日本はお金だけ出して顔が見えない」とバッシングされていたので、憲法9条のもと武装した自衛隊の海外派兵などできないけれど、民間人は自由です。だから若者を送り込んだ団体「アガペハウス」を訪ねました。その時、60歳でしたが「アガペハウス」の代表ケンさんの「何にもできなくてもヨルダンのキャンプの大地にすわって、難民の人たちの目をじっと見てあげるだけでもいいんです」という言葉に背中を押され、7人の仲間とヨルダンに向かいます。そこで戦争に苦しむ子どもたちの救援に奔走しました。

「私のボランティアは「ナン」を配るところから始まりました。そして、オフィスの掃除、毛布の出し入れ、難民となった人たちへの励ましなどをしてきたんですよ」

ヨルダン難民救援で昼食のパンを配る

1990年8月、イラクがクウェートに武力侵攻したために、国境を越えてヨルダンに逃げてきた難民に食料を渡すことから始まったボランティア活動ですが、92年にはカンボジアでタイからの帰還難民のお手伝いをし、学校建設をはじめました。1997年には「JHP・学校をつくる会」を正式名称とし、2004年全国で19番目の「認定NPO法人」に認定されました。77歳になった今でも、毎年2回若者たちとともにカンボジアへ学校づくりに行きます。

イラク北部に住んでいたクルド人は、1988年イラク軍から攻撃を受けました。私たちが1991年にヨルダンから戻って間もなく、結局湾岸戦争になって、たくさんのクルド人が難民となりました。

1991年、クルド難民の救援に、初めて大学生と行きました。

■なぜカンボジアで学校をつくるのか

ヨルダンから戻った時には「世界中の困っている人たちの力になれるかどうかが、私たちのこれからの課題だ」との考えに至っていたのです。
翌91年に大学生たちとイラン・イラク国境にてクルド難民の救援をスタートしましたが、92年からはカンボジア・タイ国境にて、カンボジア帰還難民の救援活動を始めました。カンボジアはポルポト時代の教育の破壊と知識人・文化人の大量粛清によって、校舎はもとより、文化人・教育者も信じられないほど不足していて、子どもたちの教育が成り立たない状況を知りました。何と教師の8割が虐殺されたといわれています。学校建設と教育者の育成の必要性を強く実感しました。

夢の学校の建設は1993年より始まる。

学校づくりのはじめの一歩はカンボジアからでした。

カンボジアでは、今なおゴミ山で日銭を稼ぐ子どもたちの姿もあります。教育を充実させるのは中々困難な状況のようです。

2002年11月より運営を開始したCCH(幸せの子どもの家)。ゴミ山で生活していた子どもに、多くのボランティアがコンピューター・語学・伝統舞踊を指導しています。

小山内さんに抱きつく孤児院『幸せの子どもの家』の子どもたち

■「金八先生」からJHP活動まで、小山内さんから若者たちに贈る応援歌。海外での救援活動で最も多くの宝物を得るのは、実は日本の若者たちなんです

「金八先生」のシナリオを書いていたころ、自宅に長男(利重剛・映画監督、当時中学生)の友人たちがたくさん訪ねてきて、いろいろな話を聞きました。そして「おばさんって口が固いよね」と、さまざまな打ち明け話や相談をするようになっていきました(「金八」の登場人物のモデルたちです)。
彼らが学校で勉強するのは高校受験のため、友だちはライバルなんておかしいですよね。なりたいものになるために勉強するはず、という応援歌として「金八先生」を書きました。
JHPで活動する若者たちへも同じ思いです。ボランティアを続けることは難しい面があるかもしれないけれど、ここで学んだことから自分のやりたいことを見つけて生き生きと生きてくれればと思っています。

子どもたちの笑顔を思いながら黒板を作ります。

カンボジアでミニ黒板づくり

カンボジアでブランコ作り作業を見守る小山内さん。

みんなの「心」で作るブランコはお金では買えない何かを運んでくれるんです。

92年にカンボジアに行った女子医大生は、現地でツツガムシに刺されて苦しい思いをした体験から、熱帯医療を学ぼうと志しました。その後、全米1・2といわれるメンフィスの救急病院などで学び、今や厚生省からJICAに派遣されています。カンボジアの病院で医療に従事しつつ、看護師の教育に情熱を燃やしている彼女とは、今でもカンボジアで食事を共にしたりしています。
また、大学卒業後、プノンペン大学で日本語学科の教師になった子もいます。その他にも色々な国に行って働いている若者、日本で本当にやりたい仕事を見つけた学生もいます。それぞれステキです。

 
NPOハウスのJHP事務所で働くスタッフたち

■カンボジアに咲く桜の木の下で

海外支援に向かう若者たちも、実は日本ではさまざまな悩みを抱えているかもしれませんが、海外で戦争被害に苦しむ子どもたちが必死に生きようとする姿や、校舎やブランコづくりに自ら汗を流し助け合うことから多くのことを学びます。「生きる」という実感を宝物に、「地球市民の1人である」ことを肌身で自覚する体験ができるのでしょうね。

多くのボランティアによって夢の花をたくさん咲かせました。15年目を迎えるJHPの想いは、カンボジアだけでなく、日本の将来のためにも花を咲かしてくれることでしょう。

■JHPの活動参加者、カンボジア小学生からのメッセージ

●ユーゴ班主婦
 「兵役も砲撃の音にも無縁な日本の若者たち。今幸せで、とても恵まれた国に生きていることを自覚してほしい」
●大学生K君
 「カンボジアの活動を通じて、自分の生き方が見えてきた。『本当の豊かさとは何なのか』を探し求めることです」
●小学校6年生チャブくん
 「私たちはこの新校舎をいつもきれいに守ります。そしてカンボジアのために一生懸命勉強して、将来教師になります」



カンボジアの元気いっぱいの子どもたち

■現在その活動はアジアに止まらず、旧ユーゴ、アフリカ、イランなどへの国際協力、また国内各地の被災地への救援活動などへと広がっています

学校づくりは180校舎を超え、教師育成学校には多目的棟をつくり、孤児院の運営も行っています。
2004年にはその実績を評価され、国税庁より「認定NPO法人」に認定されました。この認定を得るのは大変難しいと言われておりますが、ドナーさんの大切なお金ですからとにかく正確な会計を心掛けることです。会費や寄付でいただいたお金がどこでどのように使われたか、その方々にきちんと報告することが大切ですね。会員と支援者の皆さんには150ページに上る「年度活動記録集」を送っています。



2006年度JHP・学校をつくる会活動記録集。

JHPの想いはつなぐ〜広がる。









JHP事務所には、全国のさまざまな立場の人たちから、救援物資や、バザーなどでの資金づくりに生かしてほしいとの物資が送られてきます。

京都の名寺「常寂光寺」に建立された「女の碑」には、参議院議員 市川房江さんの「女たちここに眠る。平和を望みここに眠る」という言葉が書かれています。
「女の碑の会」の会員である小山内美江子さんは、第2次世界大戦で失われた2百万人にのぼる若者の命と、その陰に残された多くの女性が自立への道を生きることになったこと、戦争を二度と繰り返してはならないことを後世に伝えたいとの希いが、その碑には込められていると話します。
小山内さんの生き様をお聞きするうち、戦争で始まった子ども時代から今まで、常に平和と子どもたちの明るい未来を願い続けて、熱く生きてきたその思いが伝わってきました。小山内さんは、正真正銘の『ぼらんた〜るな人』です。

■インフォメーション

■アフリカへ毛布をおくる運動
アフリカの人々は「貧困」に加え、周期的な干ばつや洪水などの「自然災害」や部族間の紛争や内戦も多く、依然として厳しい状況に置かれています。現地からの報告では「寒さから身を守る」ことが一番大きなニーズです。昼夜の寒暖差が激しく、栄養が足している人々は寒さに耐えられる体力が低下しています。あなたから贈られた毛布をアフリカのみなさんへ。

・キャンペーン期間:2007年4月1日〜5月31日
・参加方法は2通り:〔喇曄楹こ依∩協力金、海外輸送協力金のみ

詳しくは こちら

受けとった毛布に包まるエチオピアの人々。毛布には1枚1枚日本語のメッセージが…

■小山内美江子 国際ボランティア・カレッジ」生徒募集
小山内美江子の国際協力に対する理念と経験、並びにJHPが活動するカンボジアに関する知識を生かして、国際ボランティア活動の中心的実践者になりうる人材の育成を目指します。

・講義期間:2007年9月15日〜2月中旬
・講師:小山内美江子、今川幸雄(元カンボジア大使・関東学園大学名誉教授)、筑紫哲也(ジャーナリスト)、高野悦子(岩波ホール総支配人)など約40名
・説明会:2007年5月26日(土) 18:00〜19:30
・会場:みなとNPOハウス4階会議室
・申込受付・お問合せ:
JHP・学校をつくる会「国際ボランティア・カレッジ事務局」(担当:金森)
TEL:03-5414-1774
URL:http://www.jhp.or.jp/college/boshu/boshu.htm

 
カンボジア現地研修でブランコづくりに汗を流す大学生たち