「セイフティ・ハロウィン」〜こども110ばんをさがせ〜


壁画のベースとなっている大きな木は、画家のまさき氏が「児童館の庭の癒しの木」から連想して描いた木。その木に家・花・動物などを桃が丘児童館の子どもたちが描いた。

子どもたちを長年見守っている「児童館の庭の癒しの木」

「こども110番の店・家」が子どもたちの安全を守るために協力しようとしても、子どもたちは「こども110番の店・家」を知っているのでしょうか。会ったこともない店や家の方に、本当に助けを求めることができるのでしょうか。
東京・中野区の桃が丘児童館では、そんな危惧から子どもたち自身が身の安全を守る力をつけられるようにと「こども110番の店・家」を訪ねるイベント「セイフティ・ハロウィン」を2006年10月に開催しました。
「セイフティ・ハロウィン」に集まった子どもたちは31人。それぞれ色とりどりのハロウィンの衣装を身につけ、10人ずつ3班に分かれて、自分たちで「こども110番の店・家」を探して訪ねます。

■「こども110番の店・家」〜地域市民がつくる地域の安全・安心〜

「こども110番の店・家」は地域の子どもたちにとって安全・安心な拠点です。「こども110番の店・家」を訪ねる試みは、各地域で行われています。

中野区立 桃が丘児童館

中野区立 桃が丘児童館

■〜桃ヶ丘児童館三木恵子館長〜
子どもたちにも地域で気に掛けてくれている人たちがいる
ってことを実感してほしかったんです。

「セイフティ・ハロウィン」〜こども110ばんをさがせ〜は、どのようなココロから取り組まれたのですか。

声を掛けてくる人を皆疑って掛かるみたいな、教育はあまりしたくないじゃないですか。
本当に気をつけなくちゃならないんだけど、地域に本当に頼りになるいいおじさん、おばさんがいるってこと、そして皆のことを良く見ていてくれているんだよ、何かあったら助けようという気持ちがある人たちが、いっぱいいるんだよというのを子どもたちに教えたいなと思ったんです。
当日、イベントに協力してくれた地域の桃が丘児童館サポーター宮坂良美さんからも「学校から『こども110番の店・家』の地図が配られるけど、大人向けに作られたものだから、現実に使う子どもたちはわかっていなかったと思う。何も知らない所に入るのって勇気のいることだから、こうやって実際にお店や家の方と顔合わせをして、敷居が低くなったわね」などの感想もいただきました。

■子どもたちが、お化けの扮装で
地域の「こども110番の家・店」を訪ね、駆け込みの訓練

セーフティ・ハロウィンでも、その前に……。

グループ内の一人ずつが順番に先頭になって「こども110番の店・家」で大声を出す担当になります。隣には“地図で探す子”、その後ろに“ハロウィンシールを持つ子”が並びました。


「こども110番の店・家」を知っている人は手をあげて!と尋ねると手をあげたのは、たった5人の子どもたちだけ。

「こども110番の家」に駆け込んだときに、家の人に本当に困った時に困っていることを伝えなければならないのに、怖い目に合って声が出なかったり、お話できなかったりしたら、折角110番の家に行ってもどうしょうもないでしょう?実際に練習しましょう。とピエロに扮した児童館の館長三木さんは子どもたちに声をかけました。

■「なんですか?何かあったの?」
小さい声で「えへへ」と言ってもいたずらかなと思われて、助けてもらえないよ!

「最初の一言は“大きな声で”自分が大変な目に合っているということを真剣に言う!「助けてくださ〜い」でいいよ。小さい声で助けてくださいと言っても、大きな声を出さないと聞こえないよ。できる?」
「家の奥の方にいるかもしれないし、テレビを見てるかもしれないし、デッカイ声出さないと聞こえないかもよ!じゃあ、大きな声で「助けてください」という練習をするよ!せえの」
子どもたち一斉に「たすけてくださーい!」
「そういいよ。家の人が出てきたら、怖い人に追いかけられています!とか変な人が跡をつけてくるんです。と説明すると、大人は警察に連絡してくれたり、こっちにおいでと、安心な所に連れて行ってくれたりするからね。とにかく、でっかい声で「助けてください」と言ったあと、どういう状況なのかを説明すること。本当の時もそれが言えなくて泣いてるだけではダメなんだよ」

■お菓子の用意をして待っている「こども110番の店・家」を探し「さあ、出発だ!」


「あっ!あったよ〜」「たすけてくださ〜い」と子どもたちは、子ども110番の店和菓子屋さんへ

和菓子屋の壷屋さんは「ハッピーハロウィン」と言って、マーブルチョコを子どもたちに渡し、「いつも5時を過ぎると、気に掛けて通りを見ているよ」と心強い言葉を掛けてくれました。

お寺の「中野不動」さん。商店街にあるためか、いきなりお堂が道路に面していて住職さんがすぐ出てきてくれました。「いつでも飛び込んできてくれていいからね」と太く通る声で話しかけてくれ、「前のお米屋さんだって、飛び込んでいいんだよ」と付け加え、牛乳せんべいを渡してくれました。

花屋「花月」の渡辺さんは、「前を通ったら声を掛けてね!名前を覚えるから」と言ってくれました。三木館長が「『こんにちは』と言って、顔を覚えてもらおうね」と声を掛けます。「よろしくお願いしまーす」「また来るよー」と徐々に大きな声で返事をする子どもたち。

こども110番の家である矢沢さんのお家は、大きな3階建ての一軒家。チャイムを鳴らすと、お母さんがニコニコ顔で出てきてくれました。「いつもおじさんがいるんだよー」と教えてくれました。「よろしくお願いしまーす」と元気に子どもたち。

「すずらん美容院」の入り口には、『お客様へ「車椅子のままでご利用できます。お気軽にどうぞ」』の貼り紙があり、入るとそのメッセージと同様、「気をつけてね」と優しく声を掛けてくれました。




























「ブロンディー美容院」、「スズキ輪業」、「星野クリーニング」、「ヨコカワモータース」など、こども110番の家・店を10軒訪ねた子どもたちですが、「『こども110番の店・家』があるのは知ってたけど、全部の家は知らなかった。でも行ってみて、これからは仲良くなれるかなと思った」と安心した様子でした。

■ココロの真ん中にも“トリック オア トリート”
〜約束を守らない子には、悪さするぞー〜

イベントが終わって、これからは「こども110番の店・家」に助けて!と言える子どもたちですが、「こども110番の店・家」に飛び込むような目に合わないためにはどうしたらいいのでしょう。

1. 登下校のとき気を付けることは何だろう?
「通学路マークのない所は子どもだけで歩かない」「大人か何人かの友だちと歩くこと」
2. もし知らない人に連れて行かれそうになったら?
「寝転がって『助けてー』というのが一番いいんだよ。殴ったり蹴ったりしても、大人の力には敵わないからね」

■Voluntarは、考えます。
「こども110番の家・店」は、地域の人びとのココロの中に、存在すると……。

「こども110番の店・家」の方たちは、実に優しい笑顔で子どもたちを迎えてくれました。子どもたちも、自分たちを見守ってくれる人たちが身近にいることで「こども110番の店・家」が安心な場所であることを実感したことと思います。いろいろな地域・企業で「こども110番の店・家」の取組みは広がっていますが、「こども110番の店・家」の取り組みは地域を愛する人びとが、地域の未来を創る子どもたちの安全を守り、地域の子どもを育てていこうとする心がなければこの活動は、機能しないと感じました。Voluntarは、この取材を通じて「こども110番の家・店」の取り組みが、多くの人びとの心に広がるようにと願います。