障がい者の社会参加をホテルから学んでみよう

社会的な福祉に対する法整備が行われていますが、市民レベルでの障がい者への理解はまだまだのようです。しかし、以前に比べると障がい者の人が電車を利用する姿や街で歩く姿を地域で見掛けるようになったと思いませんか。そのような背景に伴い、ホスピタリティーの原点であるホテルでは、障がい者が利用することに対し、どのようなサービスやおもてなしの心で障がい者に接しているのでしょうか。障がい者が安心して利用できるユニバーサルルーム。京王プラザホテル30階のお部屋をご紹介します。

※ ここでご紹介する障がい者に対する表現は一般的なものとなります。その度合いは個人個人違うものとなりますので、必要となる援助もまた異なるということを考慮ください。

京王プラザホテル

京王プラザホテル

障がい者の年間利用数800〜1000室にのぼる京王プラザホテル。車いす利用の身体障がい者のみならず、視覚障がい者や聴覚障がい者の人に対しても、ハード面においても多くの配慮がなされています。
砂井智光さん(Voluntarレポーター)

砂井智光さん
(Voluntarレポーター)

Voluntarレポーターの砂井智光さんにユニバーサルルームを体験してもらいました。「障がい者の方からユニバーサルルームの質問を受けることがあります。体験させていただけることにより、詳しい話ができることになるので、とても楽しみです」
城所明未さん(京王プラザホテル)

城所明未さん
(京王プラザホテル - 総支配人室 営業戦略 副支配人)

「月2回、社内有志の勉強会があります。そのプログラムの一つとして、ユニバーサルルームを体感するということは接客業のプロとしてとても大切なことです」

■ユニバーサルルームであってもホテルの高級感を失わないのは、
ホテルの細やかな配慮から。


幅が広く、ゆったりとしているベッド。電動リクライニング式で高さの調整も可能です。介護をする人の腰に負担が掛かりません。ホテルで使われているドリームベッド製のベッドを介護用に備えています。

ベッドの背もたれが90度になるので、起き上がるとき、腹筋に力を入れなくても楽に起きあがることができます。

車いすが2回転できる広さで設計されている部屋です。デスクに手を掛けると、力を入れなくても体をおさめることができる配慮がされています。

たっぷりと収納できるクローゼット。洋服のハンガーの位置は、訪れるお客様に合わせて修正されます。

■車いすで、バスルームを体験!


砂井 「バスルームに車いすで入ってみましょう。あれ?バスタブの横にあるこの台は、いったい何のためにあるのですか」

城所 「この台は、車イスからバスボードに移るための補助的な腰掛けボードです。ユニバーサルルームをご利用されたお客様のご要望からご用意させていただいています」

バスルームとお部屋の段差はスロープでフォローします。

■視覚障がい者への配慮

音声による情報提供ができる機械を導入しています。中でも赤外線音声情報案内システムトーキングサインという機械は優れものです。ホテルでのトーキングサインは、手元にある機械のスイッチを押すと赤外線通信により、ホテルの部屋番号、冷蔵庫の中身などの情報を説明してくれます。目が見えないと、何がどこにあるか分かりません。特に初めての場所に行ったときなどは、部屋の環境を理解することに苦労します。そんな不安を解消してくれるのがこの機械です。また、ちょっとした工夫としての面白い配慮が、シャンプーとリンスの区別。シャンプーの方に輪ゴムがしてあるのです。本当にちょっとしたことなのですが、こういう配慮は視覚障がい者ばかりでなく高齢者にもとても助かるような気がします。


トーキングサインから流れる音声は、女性の声。お部屋の情報は、優しい声で案内します。

白杖とアイマスクを使ってユニバーサルルームを体感。視覚障がい者にとって、白杖は自分自身の指のようなものです。白杖の先端から伝わるユニバーサルルームの情報は、どのようなものなのでしょう。

「シャンプーには輪ゴムが2本。コンディショナーには1本。ソープは0本」と客室係が説明します。

■補助犬(介助犬、盲導犬、聴導犬など)と一緒の利用者であってもご安心ください

ホテル内では、補助犬のエサ用ボール・マットも無料で貸してくれます。いまだに補助犬は、ペットと同じ扱いをされることがありますが、厳しい訓練を受けており、しつけもよくされているので、ペットではないことをお分かりいただけると思います。京王プラザホテルでは、ホテル内レストランにも一緒に入れるということです。しかし、レストランは、いろいろなお客様がお食事をしながら過ごされるパブリックスペースであるということも事実ですので、レストラン利用の場合、ホテル側では、先にご利用されているお客様に対し補助犬がレストラン内に入るということのお許しをいただいてからご案内するとのことです。


宿泊のお客様がお連れになった盲導犬のために餌ボールもご用意しています。

レストランでご主人が食事中です。盲導犬はテーブルの下に伏せて待ち、食事をせがんだりしません。
(写真提供:(財)アイメイト協会)

■聴覚障がい者への配慮

バイブレーターの振動を使って情報を伝えたり、室内の照明の点滅でお伝えするノックセンサーなどの機械を導入しています。ノックセンサーとは、ドアがノックされるとセンサーが反応し、フラッシュランプとバイブレーターが作動し来客を知らせます。音が聞こえないと、ドアのノック音は聞こえないし、人が来ても分かりません。それを解消してくれるのがこの機械です。また、ホテルフロントへの連絡やルームサービスを頼むときに、電話では連絡は取りづらい聴覚障がい者。そのような細かい配慮としてFAXなどでも対応しています。身近なFAXも聴覚障がい者にとっては情報を受け取る大切な機械なのですね。


お部屋のチャイムが鳴ると液晶ドアスコープの画面に来客が表示されます。

ドアのノックを感知し来訪者を知らせるノックセンサー。

情報の受信、発信に使用するファクシミリは、聴覚障がい者にとっても重要なコミュニケーションツールです。

フロント・ルームサービス客室係との意志の伝達は筆談機でします。

■ほんのちょっとした心遣いから障がい者の社会参加が広がる

京王プラザホテルのホームページ、バリアフリーページでは、文字のサイズを大きくすることができます。このようなところにも配慮がありました。
普段は気付かないことですが、ホテル側も(すべてのホテルではありませんが)障がい者がホテルを気分よく利用してもらうための対処や工夫をしてくれていることを実感しました。トーキングサインも街中にもあるのです。地下鉄の入口などでこれを見掛けることがありますが、気が付いていますか。視覚障がい者の人は、駅の情報をこの機械で知ることができ、スムーズに街中を歩くための助けになりますよね。
街中で、このようなハード面が、ある程度整えられていることを知るということは、障がい者に対しての理解も深まりますし、そのような理解のもと、障がい者に対するソフト面での対応にも気が付くのではないでしょうか。社会のハード面での整備と市民のソフト面での配慮が整えば、心のバリアも解消され障がい者の社会参加も当たり前になっていくでしょう。ホスピタリティーの原点であるホテルが、このような対応をいち早く導入していることは、個人的にとてもうれしいことです。このような心遣いは、障がい者であってもなくてもあらゆる人々の暮らしやすい環境が、おのずと出来るのではないかと、僕は思います。
これからも社会的に障がいのある人への理解が深まり、暮らしやすい環境が、一日でも早く出来ればいいなと思っています。

砂井智光(さいともみつ)

砂井智光(さいともみつ)

1982年生まれ。華僑の一家で育つ。旧名は蔡。立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ福祉学科卒業。現在、埼玉のNPO障がい者自立生活センターにおいて、常勤サポーターとして障がい者の地域生活を支援している。福祉機器や障がいについての理解を広めるべく執筆中。趣味は映画鑑賞、公園散歩、友人との買い物、手話、食べること、季節の花を見ること、友人とのおしゃべり、紅茶作り、料理(特に中華)。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」、「自分がされて嬉しいように、人に接する」。